「介護サービスの質」って、何ですか?
私が時折、驚くのはレストランの食べログやグーグルマップの細かいクチコミです。
その長文もさることながら、レビューする観点の細かさ…食器の色や形、さらには厨房の中などのハナシに至っては「こんな所まで見てるなんて、まさにどこかの覆面審査員並みだな…」と感じます。まあ、一般的なレビューは、味と値段のコスパ、盛り付け、そして店員の応対などですが。
余談はさておき、では、介護サービスの質って、具体的には何でしょうか? 先のWAMNETのレポートでは口腔連携加算などの話と絡めていたので、医療機関等との連携がサービス品質のポイントなのでしょうか?
いろいろと調べましたが、明確に「介護サービスの質」について具体的に記載したサイトや資料などは見つけられませんでした
(「QOL向上」や「自立支援」などの記載はよく見ましたが、私の観点ではそれは「目標」です)。
そこでまたAI先生(ChatGPT)にお伺いを立てたところ、以下のような回答が返ってきました。
「介護サービスの質」という言葉が抽象的である理由は、介護が非常に多岐にわたるニーズに対応する必要があるためです。QOL(生活の質)や自立支援という目標は、たしかに広範囲ですが、具体的な「質」として評価される要素を以下のように考えられます:💯。ホント、大したものです(笑)。網羅性でも「5.ケアの継続性・連携」はまさに口腔連携加算も「質の一つ」として含んでいます。
1. 介護スキル
レストランでの味や盛り付けのように、介護サービスでも専門的な技術が中心となります。これは、身体介助や医療的ケア、認知症ケアなど、具体的で実践的な技術です。これらが質の一部を決定します。
2. 個別対応の適切さ
利用者ごとに異なるニーズに応じたケアを提供することが「質」の重要な部分です。これは、パーソナライズされたケアプランを通じて、利用者の身体的・精神的な状態に合わせて調整されるべきものです。具体的には、食事の好み、入浴の介助の仕方、リハビリの頻度などです。
3. ホスピタリティ
介護においても「人としての尊厳」や「温かみ」をもった対応が重要です。利用者が安心感や信頼感を感じるかどうかは、介護士の態度やコミュニケーション能力、気配りに大きく左右されます。レストランでのホスピタリティと似ている部分ですね。
4. 環境の整備
安全かつ快適な生活環境の提供も、介護サービスの質の一部です。例えば、転倒しにくい住環境や、利用者の趣味や興味をサポートできる空間づくりなどが含まれます。
5.ケアの継続性・連携
医療機関や他のサービス提供者との連携がスムーズかどうかも、介護サービスの質を左右します。これは、レストランでの全体的なサービスの流れやチームワークといった要素に相当します。
結局、介護サービスの質は、介護スキルと利用者との人間的な接し方が中心ですが、それに加えてケア環境や他者との連携も大きな役割を果たしています。
しかし…これらすべての要素が「サービスの質」であり、これをひとりの介護職員の方に求めるのは酷だな…とも思いました。
「利用者にとって価値あるサービス」は「利用者が決める」こと
個人的な話で恐縮ですが、私が魚の味が分かるようになったのは30過ぎてからです。
とある江戸前の寿司屋に行って頂いたところ、本当に美味しかった、で、大将(まさに昔ながらの「ザ・ 寿司屋の大将」で、話しかけるのに勇気が必要でした(笑))に、どこで採れた魚かなど聞いたことがきっかけで、旬の魚や漁場などの話、更には食べ方など、いろいろ聞くことができました。
これまでスーパーなどの寿司しか食べてなかった私には、文字通り「目からうろこ」でした。もちろん、その授業料は高かったですし、今はスーパーの寿司でも贅沢ですけど(笑)。
(今はスーパーのお寿司も、昔に比べたら、断然、美味しくなっていると思います、念のため)
もし、私がそんな店に行かなければ、私は今でも、そんな魚の味をわからなかったでしょう。
だから「この魚は美味い、美味しくない」の判断も、全く、違ったものになっているでしょう。
加えて「魚の味が分かるからと言って、肉の味が分かるとは限らない」。
「利用者にとって価値あるサービス」も、これと同じだと私は思います。
そして、ここにはポイントがもうひとつあります。それは私が寿司屋の大将から魚のことを学んだように
「サービスの質も、客がそれを学び、理解しなければ、わからない」
ということです。
「パーソナライズドケア」と「利用者にとって価値あるサービス」
以前にAI先生に「訪問介護の意義」を尋ねた時、先生が話した言葉の中に「パーソナライズドケア」や「ケアの柔軟性」という言葉がありました。
これは文字通り「パーソナライズ」つまり、一人ひとりのニーズやライフスタイル、更には価値観に合わせたケアを行うということで、ケアの柔軟性もここから派生します。
もちろん、訪問介護のケアは厚労省が定めた老計第10号などにより細かく定められています。
その中で「パーソナライズする」とは、どういうことなのか?
加えて、個人個人に合わせたケアをすることは正論だが、人材不足で厳しい折、それが事業所の経営にとって更に負荷になるのではないか?とさえ思えますが…
結論から言うと、「パーソナライズ」により、利用者の「意思」に最適な介護サービス、そしてその担い手である介護職員さまを割り当てることで「売上を効率的に上げることができる」可能性がある、ということです。
たとえばここに利用者さまA,Bがいらっしゃいます。お二人とも同じ要介護レベルで、同じような有する能力を保持していたとします。
しかしAさんは「その有する能力に応じ自立した日常生活を営む」意欲が強く、Bさんはそれほどでもないとします。
もちろん、介護保険法第四条には「国民の努力及び義務」として「有する能力の維持向上に努めよ」という記載がありますが(私は、実は介護保険法において、重要な条項だと思っていますが)、これを強制することはできません。
むしろ、その過度の強制は「尊厳を保持し」に抵触する「ハラスメント」になるかもしれません。
もちろん、介護職員もBさんに対してはその意欲を持つような働きかけをする必要があります。が、何度も言うように強制はできません。
そこで「パーソナライズドケア」です。
恐らくケア方針としては、Aさんには自立を支援し、最終的には自分で何とかできるための「見守り的援助」が主体、Bさんには現状の有する能力では厳しい一般の身体、生活援助の提供、という形になるでしょう。
そして、見守り的援助と一般の介護、援助では、介護や対人などの基本スキルはどちらも必要ですが、利用者への働きかけ、ケアマネや他のサービス提供者との調整などの能力が必要になります。
Aさんに対しては、「なぜこれを共に行うか?」などの説明能力が必要になるでしょう。寿司屋の大将が私に魚の味を教えてくれたように。
例えば、先の口腔連携も、口腔ケアの重要性を利用者が理解しないと提供できません。なので、その重要性を説明し理解させるコミュニケーション能力が必要です。
そして、その必要性をケアマネ含む関係者にも説明し、ケアプランに組み込む調整力なども。
加えて、ともすれば挫けそうになりがちなAさんを鼓舞するモチベーターとしての能力も必要になります。
他方Bさんに対しては、Bさん自分では困難な作業を介助、援助するサービスの確実性と、Bさんの意欲を徐々に喚起する包容力が必要でしょう。
こうしたケアの方向性の違いにより、求められる介護職員のスキルも異なる、それを利用者の意志に合わせて配置することで、効率性でよく使われる言葉=ムリ・ムダ=のない介護職員のスキルを活用できる、ということです。
なので、最初にAI先生が言った介護サービスで求められる質を構成する要素は、一人の介護職員が全てを兼ね備える必要はなく、事業所全体として提供できればよいこと、そのためには役割分担が必要で、その役割分担がうまく機能すれば必然的に資源の最適化により、売上を効率に挙げる、にもつながるということになります。
一人のスーパーマンが何もかも行うことはすごいことですが、それを期待すると言うのは酷な話ですし、マルチタスクはしばしば「二兎を追う者は一兎をも得ず」になる場合もあります。あと「介護職員さまの、モチベーションが続かない」も。
で…実は、このマルチタスクの弊害は「経営資源の分散」という点で、介護職員の活用だけではなく、事業所経営にも言えるわけですが、これについては、また別記事で書きたいと思います。
まとめと次回
今回は「利用者にとって価値あるサービス」をきっかけに、貴重な経営資源である介護職員さまの最適配置、について書きました。
その真意は、「利用者にとって価値あるサービス」は最終的には利用者が決めること、であれば、その利用者の意思に基づき、それにふさわしいスキルを持つ介護職員を割り当てることで、介護職員さまそれぞれが持つスキルを効果的、効率的に活用できること、そして、それが最終的に「売上を効率的に上げる」可能性につながるということでした。
もちろん、それができるためには、介護職員のスキルセットの正確な把握と、キャリアパス、キャリアアッププランが必要ですが、かなりの事業所さまが処遇改善加算を取得しておられるので、そこは問題ないはず・・・?
(しかし、私がケアに関して優秀だな…と思うヘルパーの方が、昔よく辞めていったのですが、あれは何故だったのか…🤔)
さて、次回は「囲い込み」について、考えてみたいと思います。
と言っても「囲い込み」を批判するのではなく(もちろん、批判されるべき点は大いにありますが、それはもう昔から有識者の方がたくさん仰られているので)、いわば「正しい囲い込み?」についてです。
それでは、次回もよろしくお願い申し上げます。