こんにちは。合同会社たいがの小西です。
前回は社内の情報共有とコミュニケーションが何故必要か?を改めて考え、以下の3つの理由=目的を挙げました。
1. より効果的、効率的に協働するため
2. 早く成長を促すため(教育)
3. 「文殊の知恵」を生み出すため
その上で、今回は「では、これらの目的を達成するための、情報共有やコミュニケーション活性化に必要な要素とは何か?」を考えてみたいと思います。
ポイント1: 必要な情報が、いつでも誰もが見れる状態であること
私が若い頃、仕事で分からないことがあった時には先輩に質問するのが常でした。が、先輩も多忙なのでタイミングを間違えると
「今、忙しいんじゃ!見たら、分かるやろ!😤」
すみませんと恐縮&委縮しつつ、手の空いてそうな他の先輩などに聞き回ったり、あるいはタイミングを再度見計らったりするのですが、こちらも仕事の期限があります。なので、急ぎの時は、運良く捕まえた先輩に
「すみません!ご多忙は重々承知なんですが、XXXについて教えてもらえませんか?今度、🍺おごらせて頂きますので🙇♂️」
などの涙ぐましい努力?で聞き出したものでした(笑)。
そしてそのたびに思ったものです「マニュアルがあればいいのに…」。
今はもうそんな時代ではないと思っておりますが、職場によってはまだマニュアルや事務手続などが整備されていないケース、あるいは、あるにはあるが古くて役に立たない、など のケースもあるのではないでしょうか?
情報共有のポイントの一つは、本当に当たり前のことですが
「まずは、必要な情報が、いつでも誰もが見れる状態であること」
です。
先のケースでは、質問者は、答える側の多忙がひと段落したときに初めて質問して知ることができますが、それでは待ちが発生するので「効率的な協働」とは言えません。
そして、答える側としても、仕事が中断されるだけでなく、昔から私のような若輩者が何度も同じ質問をしており、同じ回答をずっと続けているはずで、明らかに効率的とは言えません。
しかし、その説明が文書化されている場合は、分からないときはその文書を読めばいいだけですし、何より再利用できる=同じ回答を何度も行う必要はないわけです。
(もちろん、先述した通り「固定化しすぎて、古くて使えない」パターンもありますが、これは情報共有自体の問題ではなく、書き方や、文書の維持管理(メンテナンス)の問題です)
なお、ここで「文書化」という言葉を使いましたが、これは「全ての情報を文書として保存する」という意味ではなく「記録化」とお考えください。
記録は「文章」だけでなく「図や絵」「音声」さらには「動画」などです。技術を教える場合などは、一般に動画の方がむいているでしょう。一方、マニュアルや手続などは、文章・図・絵などの方がむいていると思います。
要は、そのような「仕事を円滑に進めるための情報」を記録化(データ化)し、いつでも誰もが見れる状態にしなければ、そもそも情報共有やコミュニケーションは促進できない、ということです。
ポイント2: コミュニケーションの手段が複数あること
今はいろんなコミュニケーションの手段があり、それぞれ、一長一短があります。
例えば「対面での会話」や「電話」「Web会議」はリアルタイムで双方向的なので、話の意図や文脈などが重要になるコミュニケーション(議論や検討、相談など)には適しているでしょう。ただし、リアルタイム=参加者が時間を合わせる必要がある、という制約はあります。
一方、要件を伝える、記録として残すなどが主体となる場合はメールやチャットが適しているでしょう。また、リアルタイムで行うまでもない他愛もない会話などはチャットで十分だったりします(悪口や批判など(笑) しかし、この手の話から「改善」が生まれることもあります)
ただし、メールやチャットは基本的に文章(ここにはスタンプやアイコンなども含む)でのやり取り、かつ原則一方向的なので、意図や文脈が明確でない場合は、誤解されて伝わる懸念もあります。
ともあれ、時短や時差出勤、あるいはリモートワークなどの進展により、なかなかリアルタイムでコミュニケーションすることが難しい中、コミュニケーション手段が複数あることは
「コミュニケーションを効率的に行い、かつそれを深める」
ことにおいて不可欠です。
もちろん、このメリットを享受するためには
「仕事の内容や相手にふさわしいコミュニケーション手段を選ぶ」
ことが、大前提になりますが。
(私は「こんな内容を、チャットで送ってくるなよ!」と思うことが、しばしばあります(苦笑))
ポイント3: 情報共有やコミュニケーションを促す社風であること
ポイント1,2はどちらかと言うと技法や技術よりの話ですが、ポイント3は文字通り社内文化の観点です。そして、実はこれが一番重要なポイントです。これがなければ、ポイント1もポイント2も、仮に素晴らしい技術やソフトウェアを入れたところで、形骸化するに決まっているからです。
(私は、この形骸化パターンを企業規模に関わらず、たくさん見てきました)
私は先に、若い頃「マニュアルがあればいいのに…」と思った話をしました。しかし、もしこれを上司に言い、上司から
「余計なこと考えるな! そんなことより、うまいこと早く聞き出さんから、オマエは仕事が遅いんじゃ!!」
などと言われたとしたら、私はもう、何も言うことはできませんし、今後、上司に何かを相談することもないでしょう。
また「技術を学ぶ」にしても、昔は匠の仕事でなくても「よく見て、盗め」などと言われたりしました(で、私も先輩の仕事ぶりから盗ませて頂いたことも多々ありました)。
しかし…個人事業主として技を競い、レギュラーの座を勝ち取る必要のあるプロ野球選手ならまだしも、協働して仕事を進めることが前提である会社にあっては、やはり教育のベースは「知識や技術、そして知恵を広く共有する」ことが必要だと思います。実際、当のプロ野球でさえ、技術を教えるコーチがいますし、選手を協働させる監督がいるのですから。
基本や標準は前述した「記録」で、ある程度は学ぶことができます。その上で、実際の先輩の仕事を「よく見て、盗め」ば、実践力と応用力が培われるでしょう。
また、その中で後輩が先輩に「どうして、そのようにするのですか?」などの質問を行い、これに対し先輩が親切に答えてあげれば、より効果的に学ぶことができるでしょう。
問題は
「誰が、記録化するのか?」
「誰が、親切にやり取りしてあげるのか?」
であり、「誰が」の数が多いほど「コミュニケーションを促す社風である」
ということです。
大企業のように従業員教育が独立した部署で行われている場合には、彼らがその役割を担うのでしょうが、彼らも現場のことは詳しくないので限りがあります。
ましてや、人員その他リソース制約のある中堅・中小企業においては、専門部署など立ち上げる余裕はないのも事実でしょう。
しかし、それで手をこまねいて
「わが社の新人は育たない」とか
「わが社には、優秀な人材が集まらない…」
などと言っても、何も始まらないのも、また事実です。
何故なら人が集まらないのは今に始まったことではないこと、その中でどうやりくりするかが管理者・経営者の腕の見せ所だからです。
情報の共有やコミュニケーションの活性化に関して言えば、会社主導で促進できる余地は十分にあります。端的には、「記録化する」「親切に教える・コミュニケーションする」従業員を評価し、インセンティブを与えることです。
「会社に貢献する」とは、何も抜群の営業成績や、特許技術を開発することだけではなく「教えるのがうまい」「文書にするのがうまい」や「皆が日常の業務でちょっと困っていることを手助けする」も含まれるはずです。そして、これを評価できるか否かが「コミュニケーションを促進する社風か否か」だと思います。
まとめ
「情報共有やコミュニケーション活性化に必要な要素」を考えてみました。
ポイントを3つ挙げましたが、やはりキーとなるのは「情報共有やコミュニケーションを促す社風」、そしてこれは、結局、前回の「なぜ、必要か?」に関わる話で、自社において、情報の共有化・コミュニケーションの活性化を経営者の方がどう判断するかによると思います。
確かに、情報共有やコミュニケーションの活性化は「営業部員を増やす」や「販売チャネルを増やす」などの施策に比べ、業績への直結性という点では遠回りに見えるので。
私自身は、過去の経験から「情報共有やコミュニケーションの活性化」は「会社の基盤となる重要な土台」と考えています。
次回以降は、今日あげた3つのポイントが理解されたことを前提に、
「では、情報共有やコミュニケーションの活性化を行うために、どんな道具が必要か?」
について、専門的なIT視点ではなく、まずは業務的視点で、考えてみたいと思います。
それでは次回もよろしくお願い申し上げます。