前回は「社内の情報共有とコミュニケーションをゼロベースで考える」ことの意義を説明させて頂きました。
今回は「なぜ、情報共有とコミュニケーションの活性化が必要なのか?」を考えてみたいと思います。
理由1: より効果的、効率的に協働するため
情報の共有やコミュニケーションが必要なのは、当たり前ですが「他人と共に働く」つまり、協働するからです。
たとえば、私が今やってるブログ書きは一人でやってるので、他人は介在しません。
しかし、これが社内の重要な規約文書などであれば話は別です。私は文書(草稿)を書きますが、これをチェックし、校正したり校閲する別の人が必要です。また、この書類を印刷・製本するなら業者や、業者への支払いのために経理担当なども介在するかもしれません。
また、営業においても昔は一匹狼のイメージがありましたが、近年ではチーム営業、更にはAIDMA(AIDA)などの消費者の購買プロセスに対応した、マーケティングと一体化した営業活動が増えました。これにより、マーケティング部署と営業部署、更にその他の部署との協働が一般的になっています。
こうした、役割分担に基づく協働は仕事内容を問わず、至る所にあります。
さて、私は社内規約の草稿担当者として、まずは私の書いた草稿を校閲担当者に見てもらうために、当たり前ですが【「草稿文書」という情報】を共有しなければなりません。
また、仕事には必ず期日があります。この場合は文書の完成が大きな期日ですが、それ以外に、私が草稿を完了する期日、それに、校閲担当者が校閲を完了する期日、そしてそれを印刷業者に渡し(出稿)、印刷後に印刷物を受け取る期日があります。
仮に私が、校閲担当者に出稿の期日を伝えず、出稿前日に校閲担当者に
「明日、出稿するので、今日中に校閲して下さい🙇♂️」などと言えば
「ハア? 何考えてんねん! そんな直前に言われても、できるわけないやろ!😤」
と怒られるでしょう。つまり、私は校閲担当者に【「出稿期日」という情報】を伝達していなかったために、完成が遅れるはめになる、というわけです。
その上、実は印刷業者からの【見積内容=料金・納品期日・支払期日その他の情報】も、上司や経理に伝えていなかったとしたら、上司や経理担当者はカンカン、
「他に頼むから、この仕事はもう、やらんでえーわ🤬」
となるでしょうね。
したがって
個々の仕事を担当する者同士の協働をより効果的、効率的に進めるためには、情報の共有化やコミュニケーションが必要不可欠
というわけです。
なお、どんな情報共有やコミュニケーションが必要か?は仕事の内容によって異なりますし、「他人」(関係者)が増えるほど、共有する情報やコミュニケーションの数も多くなります。
例えば前述の「規約文書の作成」であれば、成果物となる文書や各期日の共有と管理が必要です。また、見積書等、社外とのやり取りの情報や、文章の趣旨や指摘の趣旨を確認するための相互コミュニケーション、さらに社内や社外のやり取りの記録などを残ことも必要になるでしょう。
理由2: 早く成長を促すため(教育)
協働する場合、OJTとして、まだ経験が浅い者が、経験ある先輩とチームを組む場合は多くあります。
これは、経験ある先輩にとっては
「その仕事を完成させる」に加え「経験の浅い者に、その仕事の内容を覚えさせる」
という2つの仕事が与えられているということです。
(それを指示する管理者の皆さまは、この認識はおありでしょうか?)
現在従業員の方も、いずれは定年やその他の事情により辞めていくのだから、新人の教育はどこの会社にとって不可欠です。
また、昨今は人手不足もあいまって、パートやアルバイトなど短時間労働者の方の活用も欠かせません。
そのためには「効率よく、効果のある=仕事でつかえる=知識や技術をインプットする」ことが必要です。要は仕事のための知識や技術を、早く、そしてなるべく短期間で、そして可能であればあまり費用をかけず、覚えてもらうこと。
教えることはコミュニケーションそのものです。また、仕事のやり方やノウハウなどの情報を共有することでもあります。なので、ここでの情報共有やコミュニケーション活性化の理由(目的)は
「教育をより効果的、効率的に進める」ことです。
そのために、どんな情報共有やコミュニケーションが必要か?これも仕事内容によりさまざまですが、人手不足や「働き方改革」の折、手取り足取りで教えることはなかなか難しい状況になっています。もちろん、技術習得などは、手取り足取りが必要になる場面は必ずありますが、これも動画などで全体像をさらった上で、重要なポイントを手取り足取りで教える、などの方が、効率的であり、またメリハリがつく指導になるかもしれません。
理由3:「文殊の知恵」を生み出すため
昔(今も?)、私が勤めていた会社ではQC活動と呼ばれるものがありました。これは職場のメンバーが現場目線で仕事の改善を継続的に行う活動なのですが、私の頃には、あるあるパターンで活動が形骸化し「参加すること、ただ、行うことに意義がある」に陥っていたと思います。
しかし、QCをうまく活用した会社(特に製造業)もあり、そこでは本当の意味での業務改善が行われていました。
また、別に「QC」や「勉強会」のような社内的に認められた活動でなくても、現場の課題やその改善などに熱心な人たちが自然と集まって、より効果的、効率的な仕事の仕方などについて話しあうことなどもありました。
(私はこの種の「課題や改善を考える」ミーティングなどは大好きで、よく参加していました)
そのような、ある種自発的な改善活動が、単なる現場目線での改善だけに留まらず、お客さまへのサービス改善などにつながったケースもあります。
もちろん、そんな大それたものでなくても、現場の苦労が少しでも減る、あるいは、現場が前向きに仕事ができる、そんなアイデアでも立派な改善の効果です。
要は「三人寄れば文殊の知恵」ということです。
もちろん、「文殊の知恵」が出るためには、単に三人集まればよいというわけではなく、そこで上下関係などのしがらみから解放された、ざっくばらんなコミュニケーション(議論)が不可欠ですし、何よりその参加者が、問題意識をもって改善に前向きでなければなりませんが。
加えて、文殊の知恵が生まれるヒントの一つとして、他部署、あるいは他社の好事例などの情報なども必要になるでしょう。
社内の情報共有やコミュニケーション活性化の目的として、これを挙げるコンサルタントなどは少ないかもしれませんが、私は経営資源に制約のある中堅・中小企業さまこそ、これを促進し、社内文化として根付かせることが大切だと考えます。
まとめ
「なぜ、情報の共有化やコミュニケーションの活性化が必要なのか?」を私なりにゼロベースで考えてみました。もちろん、他にもいろいろ理由は考えられるかもしれません。
ポイントは前回にも申し上げたように「言わずもがなの当たり前のことを、改めて考えてみること」で、その重要性を再認識できたり、あるいは新たな発見があるかもしれない(逆に「実は、本当に必要か?」となるかもしれない)ということです。
そうなれば、これまではただの建前だけの掛け声だった「情報共有を強化する」や「コミュニケーションの活性化」が、改めて意味を持つものとなるでしょう。
次回以降は、ここで考えた結果を踏まえ、
「では、情報共有やコミュニケーション活性化に必要な要素は何か?」
を考えてみたいと思います。
次回もよろしくお願い申し上げます。